医療川柳




小さくて一瞬のこと見逃さない


ちいさくて いっしゅん の こと みのがさない




a moment’s twitch
or the tiniest breath
we catch it all

– Fujisaki Yukiyo
– English by Chay Schiller



重症の状態で搬送され、5日間眠り続けている患者さんのリハビリ中の出来事です。

患者さんは気管挿管され、反応のない状態なので、リハビリとしては症状が変化しないかのチェックと、マッサージや関節を動かす運動、声かけをして刺激を与えるなどを毎日行っていました。

昨日、腕を動かした時にまぶたがわずかに動くのに気付きました。急いで呼びかけると、目をパチっと開きました。でもすぐに目は閉じてしまいそうです。大声で肩を叩きながら、「◯◯さん!目を開けてください!」と言うと、それに応えるようにまた目を開けてくれます。「わかりますか?」と言うと、うなづきます。「ここは病院です。倒れた時のことを覚えていますか?」と言うと、首をよこにふります。意思疎通できます!

急いで看護師を呼ぶと2人駆けつけて、患者さんの反応を確認し、とても喜びました。というのはこの患者さんは、命がもつか、命がもっても目を覚ますか分からないくらい重症だったのです。目を覚ましたのは、奇跡に近い状態です。

心配して毎日付き添いに来ていたご家族がちょうどおられなかったので、急いで探しに行きました。ご家族はみつかりませんでしたが、10分後に部屋に来られました。「◯◯さん、目を覚ましましたよ!」と伝えると、患者さんのそばに駆け寄り、声をかけ、涙を流しています。

ずっと心配そうにしていたご家族を見ていたので、とても感動しました。いつもは患者さんやご家族の前では、悲しくても嬉しくても涙をこらえて、冷静に、でも温かく接します。でも今日はこの病院に勤めて初めてご家族と一緒に泣きました。

「もっと早く救急車を呼んでいれば…」、「病院に通って薬を飲んでいれば…」、「もうダメかもしれない…」、ご家族はいろいろな思いを抱えて付き添っていたことと思います。そんな心情を思うと、堪え切れませんでした。

やっと一山超えたばかりで、予断を許さない状況です。でも、希望を持つことは悪いことではないと思います。

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